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ペタン ペタン
ハンバーグのタネの空気を抜く葉月の背中を、椅子の背に顎を乗せながら見つめる。
葉月が着ている青のチェックのエプロンは、俺が中学の時に家庭科のミシンの授業で作ったやつ。
上京してお金もない葉月を、うちの親が空いてる部屋を貸してて、家賃がわりに葉月は料理を作っていた。
俺が高校生になって何度か夜這いを試みては鍵を増やされ、とうとう貯金も貯まって出ていってしまった。
くっそ。既成事実を作ればよかった。
「けい君暇ならサラダを混ぜてよ」
「暇じゃない。葉月の背中見てる」
「それを暇って言うんです」
慣れた手つきで両親の分も作ってるのが見えてイラッとする。
俺だけに作って欲しいんだけど。
ギィーッと床を擦りながら椅子のまま葉月の横に寄り添う。
「サラダどれ?」
「この卵とカボチャとキュウリを混ぜて下さい」
「…………」
「あの、けい君?」
「何?」
「お尻触るの止めて下さい」
絶対にやだ。
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