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中三の夏、冷房は喉を痛めると言っていたから、葉月は窓を開けていた。
その窓から侵入し、眠り姫のように寝息も聞こえないような葉月のベットに乗って、パジャマ変わりに着ていたTシャツに手を入れた。
少し汗ばんだ胸に、胸が高鳴った時、
ハラリと俺のパジャマのボタンが外れて肌が露になる。
真っ直ぐに俺を見る葉月が、囁くように言う。
――声は我慢できますか?
葉月の人差し指が俺の肌をなぞる。
暑いはずの部屋なのに、その指先は冷たくて、真っ暗な中、存在感を出して肌に染み込んでいく。
期待して背中がぞくぞくする。
「せめてムードぐらい考えて下さいよ。愛してるとか好きだとか……そんな言葉をずっと待ってたのにな」
そう寂しげに笑うと、起き上がって俺を壁際に追い詰める。
「可愛く泣いてね、けい君」
「泣くのは葉月だろ?」
「…………」
「…………」
どうやら両者に行き違いが生じたようだった。
「えっと、けい君が俺を受け入れてくれるんですよね?」
「は? 俺は葉月を抱きたいんだぞ?」
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