1

9/12
前へ
/169ページ
次へ
「西島くん忙しそうね。」 小坂さんの声で我に返り、顔を戻した。 「そうですね。」 「営業部のエースだからね。」 「エース…。」 人懐っこい笑顔を思い出し、少し笑ってしまった。 「私の同期なんて、いつも褒めてるよ。」 飲むと、いっつも西島くんの話になって…と笑いながら話す小坂さん。 「そうなんですか?本人に言ったら、喜びますよ。」 嬉しそうにハイテンションになるにっしーを想像しながら言うと、小坂さんから耳を疑う言葉が出た。 「彼女から伝えてあげてよ。」 「へ?」 笑顔の小坂さんを見て、間抜けな声が出た。 「あれ?違うの?」 言葉を失っていると、入り口が開いた。 「いらっしゃいませ。」 お辞儀をしている小坂さんを見て、私も遅れてお辞儀をした。 「いらっしゃいませ。」 初めて見たお客様は、にっしーが言っていたお客様だった。 「伊藤さん、西島くんに連絡して。」 小坂さんに言われ、内線を押す。 受話器を持ちながら、さっきの小坂さんの一言を思い出してしまった。 彼女って…。 呼び出しが鳴ったと思ったら、すぐに、にっしーの声がした。 『営業部、西島です。』 聞き慣れている声なのに、少し焦る。 「あっ。うっ受付です。」 噛んじゃった…。 『千晃?あはっ。あっ!お客様来た?』 笑っているのがわかる声。 「はい。」 『わかった。今行くね。』 「はい。お願いします。」 内線が切れたのを確認して、受話器を置いた。 「只今、西島が参りますので、そちらにお掛けになってお待ち下さい。」 お客様に伝えると、顔が熱いのに気づいた。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加