第1章

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追いかけてくれるんじゃないか…なんて。 振り返る。 何度も何度も振り返りながら、 アパートの廊下を。 来てくれる訳ないのに。 もう帰るな って言ってくれるんじゃないかって ちょっとは想ったのに。 毅…? 毅はそのうち忘れるって言ったけど、 私には無理。 毅が居ないこれからなんて、 想像できない。 したくもない。 毅…? 私はもう… いっぱいママに甘えたから。 今までママにひとりで甘えたから… これからは毅がママに甘えていいのよ? 私は居なくなるから。 最後に優子の声が聞きたい。 ごめんねって言いたい。 友達になってくれたのに、 もう一緒にどこにも行けない。 学校でいろんな話も出来ない。 もう私の魂は… 死んじゃったから。 シャワーを浴びて キッチンにあるママの睡眠薬をそっと取り出した。 病院で処方されてるもの。 引き出しに入ってるのは知ってた。 ママにそんな過去があったなんて… だから眠れない夜があるのね… そして、 毅と 両親に 手紙を書いた。 本当はちゃんと話したいけど、 もう、 話せないから。 薬を飲んで… 優子に電話じゃなくてメールを入れた。 声を聞くと、 泣いちゃいそうだから。 毅がこの前まで寝てたベッド。 まだ毅のにおいがする。 毅の首筋と同じにおい 毅の香りに包まれて… 私は顔そりのカミソリを 手首に当てた…
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