ある部屋

3/4
前へ
/65ページ
次へ
ピッとどこかで音が鳴り、空気の抜ける音もした 扉が開く 「これがあの女の研究ですよ」 女が部屋の中の一点を指差して言った -嘘- 56号は目を背ける 女は部屋の中に入った 「真実です。見なさい」 部屋の中は赤一色で塗られている -嘘、嘘に決まってる…- 目を背けていた56号は心を決め、部屋の中に視線を戻す 「あの女の研究は、あなたを作ることだったんです」 ある台の側にいる女が言っている 「しかし研究費用が出てこない」 女の足下に置かれているのは、奥行きや高さなどが大きい檻である 女はそれを蹴飛ばした 鉄が曲がる音がして、檻が変形する 「そこであの女は人間を使ったのですよ」 檻の中に白骨があった それを指差す 56号は嘘嘘嘘嘘と呟きながら部屋を見てゆく 「嘘じゃないです」 部屋は飛び散った血液で真っ赤に染まっている 女はその中を歩き、部屋を出た 「あの女は、あなたと同じ物を欲しがったのですが」 「どうしても脳のコンピューターが解けなかったのです」 「R-56、脳というのは5%しか使用していません」 「わたしはこう考えます」 「“100%使用すると、死ぬ”」 -死ぬ?- 56号が静かな声で聞いた
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加