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そう言うしかなかった。
そしてもう既に答えは出ていた。
「……負けました」
それが答えだった。
仮に返しのターンが此方にあったとしても、少なくとも場のカードを埋めるためのカードが此方の手札には存在しない。
かと言ってこの状態で相手に六点ダメージを与える術も此方にはない。
完全に勝負は積んでいたのだ。
「ありがとうございました」
最後に少女の方が無機質な声でそう言った。
俺は何も言えなかった。
ただ現状を悔やんでいたに違いない。
すると、少女から更に言葉が返ってきた。
「今日はこれで帰ります。
良い情報が入りました。
ではまた」
そう言って少女はカードをまたワンピースのポケットに終うと、その無機質で無表情な表情を少し綻ばせながら社を後にした。
その瞬間、俺の居る社の中からも聞こえる程の轟音が少女の立つその場上空から聴こえてきた。
一瞬雷かとも思ったが、それは幾らなんでも空色が違いすぎるし、何より上空に雲がない筈だった。
しかし確かに少女の側から聴こえて来るゴウゴウと言う音が、俺の耳を圧迫している。
そして少女が石畳を歩いてその場を立ち去るまでその音は続いたのだった。
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