【白の章】出会い

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 五月のゴールデンウィーク二日目の今日、中学二年に成り立ての俺はいつものようにカードゲームの大会に参加する。  相手は大人。でも余裕である。  理由は簡単。だって負けてないからである。 「……考えます」  相手の眼鏡の男性から長考の声が上がった。 「どうぞ」  俺はその眼鏡の男性に対してにこやかにそう言って内心ほくそ笑んだ。 ――勝ったな。  そう心で感じていた。  そして、最後の時を迎える。 「負けました」  長考を解いた男性からのその一言が何より俺には心地好かった。 「ありがとうございました」  そう言って俺と眼鏡の男性は御辞儀する。  子供のカードゲームと言っても実際大人たちも集うような環境ではこう言った世間の礼儀作法はかなり重要だった。  此方の態度次第では後々色んな愚痴やらも飛び交ってしまいには負け惜しみなんかも言ってきたりする。 ――正直ウザイ。  そんなわけで俺はそんなカードゲームの世界で生き抜く処世術として礼儀正しく相手に頭を下げる。  礼式を重んじる日本の子供らしい一面を俺は相手に見せる。  そしてこの店の店長の号令が終了の合図を告げた。 「以上で対戦終了とします。参加賞は各自受け取るように。お疲れ様でした! 本日の大会優勝者は神宮寺勝人君です」
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