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早瀬凪人(はやせ なぎと)は、『ショートタイム3600円~』と料金案内が書かれた看板の前に立った。
瞼の上で切りそろえられた茶色い前髪の下、大きな瞳が訝しげに凪人を映す。
「行こ?」
咲和(さわ)から放たれる不信感を肌で感じながら、凪人はケロッとした様子で、尖った顎先を入口に向けた。
咲和はグロスを塗った唇を噛み、長い作り物の睫毛を伏せた。白いハンドバッグの取っ手を握り締める手に力がこもる。
凪人は、わざとらしく小首を傾げた。
「どしたの?」
凪人の声は明るい。
「……こんなつもりじゃ、なかったのに」
咲和はか細い声で呟いた。
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