3、秘密のフォロワー

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 咲和は、駅では楽しそうにはしゃいでいたのに、周囲に現れ始めた建物や雰囲気に気付いてからは、あからさまに表情が曇っていった。  そして今、目に涙を溜めている。  唇をきりっと噛むと、凪人の胸板にハンドバッグをぶつけた。その拍子に、バッグの口から白いコンパクトと口紅がこぼれ落ちる。  咲和は慌てて拾い上げ、凪人に背中を向けて走り始めた。ミュールだと走りにくいのだろう、段差も何もないところでつまずき、アスファルトに両手をついた。  けれどもすぐにまた立ち上がり、走り去った。  一連の様子をぼんやり眺めていた凪人は、瞼に落ちかかる黒い前髪を掻き上げた。 「ダメだ。何のドラマにもならねえや」  滑稽だ。  ふと背中に視線を感じて、振り返った。
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