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翌日、緑川はそのハンカチを持って出社した。においが消えないように手をかけてラップに包んでおいた。営業の外回りのあいだ、トイレでそれを嗅ぐと元気が出た。しかし、所詮は「もの」に過ぎない。大切には思いつつも、自分の心のみすぼらしさと、男のつまらなさとを感じた。それは常々緑川につきまとっていた感覚だった。ブラジャーをしている男の会社員が世の中にいるそうだが、そういう人間を責めることはできないと緑川は思った。
昼間の都会は異常である。子供は学校に吸収されて、大人しかいない。老人や中年ばかりの昼の街を歩いていると、人類の滅亡する日が近いような幻想にさえとらわれた。
外回りに行けば、小学校がひとつはある。緑川はなるべく近くに行って足を留め、運がよければ体育や下校時の女子を眺めるのだった。インターネットで拾った女の子の画像が緑川の家には山ほどあった。それは、いくら集めても足りないが、集めないわけにいかない心の隙を埋めるおがくずだった。
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