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「え、嘘ちょっと!まだ中いるんすけどー!」
扉へ近寄ろうと駆け出すが、暗闇の中であるためマットか何かに足をとられ、つんのめっている間に扉の外から人の気配は消えてしまった。
「誰かー!いないんすか!?先生ー!」
倉庫の鍵を持っているのは教師のみ。
さっき体育館にいた先生がきっと犯人なのだろうが、どれだけ扉を叩いても大声を出しても届かないところへ行ってしまったらしい。
「千佳……」
無慈悲に閉ざされた厚く重たい鉄の扉に手を当てたまま、俺は後ろにいるであろう千佳の名を呼んだ。
「体育倉庫に閉じ込められる展開キタコレ!」
「言ってる場合かっ!」
やや現実逃避気味にこのベタな状況を喜んでみせたが、案の定千佳に後頭部を引っ叩かれた。
「さて、とりあえず助けを呼ぶか」
「あら、怜ちゃんてこういう時落ち着くタイプなんだね」
「暗い部屋って落ち着くよな」
「ああ、そういう理由」
「とりあえず千佳、携帯持ってんなら清水さんにでも連絡して、早坂に知らせてもらってくれ」
「え、怜ちゃんのケータイは?」
「鞄の中。鞄は外」
「了解。水美さんのケータイ知っててよかったー」
千佳の携帯電話の明かりを頼りに、俺は今さっき足をとられた体操マットに腰掛けた。
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