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「ねぇ、怜ちゃん。知ってる?」
せっかくなのでこのまま寝てしまおうかと、横になったまま目を閉じたところで、千佳の声が降ってきた。
「何を?」
俺は目を閉じたまま答える。
「従兄妹でも、結婚できるってこと」
その時、俺は違和感を覚えた。
千佳の声は、俺の顔を覗き込んでいるにしては近く、おまけに吐息が顔にかかっているような気配がある。
一体どんな体勢で話してやがるんだ。
目を開けると案の定、文字通り目と鼻の先に、千佳の顔があった。
暗い倉庫の中でも、流石にこの距離でははっきりと千佳の表情まで窺える。
一歌に悪戯を仕掛けた時の、あの表情だ。
「えと、千佳さん。えらく近くないですか?チカだけに」
そんな俺のお茶目なジョークが気に触ったのか、それとも俺の口が臭かったのか、はたまた悲鳴を上げるなということなのか、千佳は俺の口に手を当てて塞いだ。
突然の開口権剥奪に戸惑っている俺を見下しながら、千佳はそのまま俺の腹に跨り、マウントポジションを獲得。
いつでも退かすことができる体重差のはずなのだが、千佳の真意が分からず混乱する俺には、そんな落ち着いた対処はできなかった。
「この事態は想定外だけど、せっかくのハプニングイベントだし、ここで畳みかけちゃおうかな」
ペロリと舌なめずりをする千佳。
こんなハプニングイベントが起こるフラグを、俺はいつの間に立てたというのだろうか。
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