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清水さんは両手で扉を開ききった体勢のまま、俺と千佳を見て固まった。
「ある程度予想はしてたけど、まさか上下逆とは……」
その時、俺の春が全力で走り去っていく足音が聞こえた。
「ち、違うんだ清水さん!下心はないんだ!ただ千佳が妹に見えてしまっただけなんだ!」
「怜ちゃん、それ言い訳にすらなってない」
ただ妹を愛する純粋な兄の気持ちを目で訴える俺と、俺に押さえつけられながら冷静にツッコミをする千佳を見て、清水さんは極上の笑顔を浮かべた。
「大丈夫だよ、これくらいじゃ赤坂くんを見る目は変わらないから」
「そりゃあ良かっ……え、俺って普段からどんな目で見られてんの?」
「いいから、ギルマスさんは早くお家に帰ってね」
極上の笑顔で首を傾げる清水さん。
超可愛い。怖いほど。
「はい、すんません。恩に着ます」
「じゃあ、私は千佳ちゃんとお話があるから」
極上の笑顔を崩すことなく俺の背中を突き飛ばし、清水さんは千佳のセーラー服の襟首を持ち上げた。
「あう……怜ちゃん、あたしのことは構わず、早く斜悪のところへ」
「くっ、千佳。お前の犠牲は無駄にはしねぇ!」
「そうだよ怜ちゃん、走って!あたし達ギルメンのために!」
「わかったよ千佳。絶対、絶対俺は奴を倒して……」
「いいから早く行きなさい!」
「はい、さーせんっ!」
清水さんからの一喝に再び背中を押され、俺は体育倉庫から飛び出した。
走りながらふと振り返ると、清水さんと千佳は親指をぐっと立てたので、俺も同じ仕草を返し、分泌されたアドレナリンは走る方に使うことにした。
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