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「何やってんだ赤坂!早く帰れって言っただろ!」
振り返ると、早坂はすぐ目の前までダッシュして来ていて、俺の体を横に押し退け、走ってきた勢いそのままに体育教師へ頭を下げた。
「すんません先生!赤坂はこれから大事な大事な大っ事な用事があるのに俺がバレー部作るために頭数として無理矢理付き合せたんですがこいつ超良い奴で後片付けまで手伝ってくれるって言うから俺甘えちゃって!こいつは何も悪くないんです俺が全部悪いんす!ボールの籠とスコアボードは俺がこれから新品以上に超綺麗にしときますんで!どうか勘弁してください!この通りっす!」
170度くらい腰を曲げて敬礼する早坂に気圧され、体育教師は思わず一歩後ずさった。
「お、おう、そうか。それなら別にいいんだ。すまんな赤坂、足止めして」
早坂はガラケーのごとく腰を折り曲げたまま、俺にウィンクをして親指を立てて見せた。
恰好良すぎるぜ早坂。
「助かった!この恩はいつか返す!」
そもそもこいつのせいでこんな事態に陥っていることも忘れ、俺は再びアドレナリンの分泌を始めながら、ダッシュで帰宅の途についた。
***
視界良好。
視野は広く、景色は色濃い。
通学路の曲がり角にあるカーブミラーに映った人影も見逃さず、後ろから追い越そうとする車のエンジン音も聞き逃さず、スピードをほとんど緩めることなく、安全快速で自宅まで自転車を走らせた。
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