第五話 慌ただしい夏の幕開け

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  「つまり!今度プールに遊びに行こうぜって話だぜっ!」 早坂からの提案を音として耳から収集し、情報を脳へと伝達。早坂やその他数名の男子とプールへ行く様子を想像。検討の余地もなく脳内会議は判決を下したので、口を使ってそれを早坂に伝える。 「断る!」 「ですよねー!」 俺はこの夏忙しい。 むさい男共とプールに入ってる暇なんてないんだよ。 「そうだよなぁ。妹と同級生の男子、比べるまでもない。それでこそシスコン番長だ。だが、俺が何のカードもなくお前の前に立ったと思うなよ?」 「ど、どういうことだ……」 「これでも、行かないと言えるのかっ?」 早坂は振り返り、後ろへ手を伸ばした。 するとそこに、一人の女子生徒が現れた。 清水瑞穂。 このクラスで初めてできた俺の友達であり、このクラスで唯一、俺が急いで家に帰りたい本当の理由を知っている人物である。 ちなみに、俺的評価ではクラス一可愛い女子であり、クラス内でもトップレベルの胸部兵装を備えている。 「ま、まさか……」 「そうだ!何もむさい男だけでプールに行くわけじゃねぇ!クラスのマドンナ清水瑞穂とその他の女子も一緒だ!」 「その他とか言うなー、アホ坂ー」 多分、既にプール行きメンバーは決まっているのだろう。 その他呼ばわりされてしまった女子からささやかな野次が飛ばされ、俺は状況を改めて理解する。 つまり、男女数名でプールに行くという素晴らしい企画が立てられたものの、男子が一人足りず、そのメンバー候補として部活動に所属していない俺が選ばれたのだろう。 ていうか、アホ坂だとどっちかというと俺っぽいからやめて欲しいんだが。
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