第1章

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悠は特に飾り気のない廊下をヒタヒタと歩く。 習慣化されてはいるが、起きたばかりの頭を覚ますために洗面所で歯を磨く。歯を磨くと言っても技術は発展し、作業をよりシステマチックにすることでその作業は瞬きをする程度になった。 歯を磨き終えたあと、顔を洗う。普段なら温めの温度の水で洗うのだが、今は自動温度調節を解除しそのまま水を使用する。手に水が当たるとわかるが水温は十五、六度だろうか冷たく感じる。 目を覚ます、嫌、ここでは気持ちを晴らすという言葉の方が正確で的を射ている気がする。 現代ではこのようなことが稀にある。 人間は産まれた時にその人間が産まれた証として脳に極微小な「チップ」を埋め込まれ、その人間専用の「コード」を与えられる。 「チップ」は「コード」と人間の思考を繋げる媒介の様なものだ。 そして、「コード」は意思のない自分の外的な頭脳である。 人間が覚えていることは「コード」も覚えている。「コード」が覚えていることは人間も覚えているというイコール式が成り立つ。
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