第1章

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「ママはどんな人だったのかな?とか考えてたら、切なくなっちゃって。気が付いたら涙止まらなくなってたわ」  また少し涙が込み上げてきたようで、目が潤んでいる。 「普段はママのこと思い返すことなんて無いのになぁ。ママからはたくさんのものを貰ったわ。この美貌でしょ、イヤリング、歌声、歌、そして生命」  そこまで話すとエティアは言葉を切って、ソファに身体を沈めた。 「『アイモ』はやっぱり私たちにとって母の歌なのよ」 「私たち?」 「私とクレアちゃん。私たちはママが歌っていたのを覚えていたわけでしょう?だから母の歌なのよ。私の場合はママだけじゃなくて、グレイスが歌詞を教えてくれたから、そういう意味ではグレイスもママなのかしら」 「そうだな」 「ママもグレイスも私の近くには居ないけど、この歌が私たちを繋いでくれているって思うの」  嬉しそうにエティアが言うと、カンナも口許を緩めた。 「強いな、お前は」 「あら、当たり前じゃない。ハーツ家は代々女が強いのよ?」  胸を張ってエティアはそう言うと、両腕を上に伸ばして大きく伸びをする。 「あー、何かお腹空いてきちゃった。ね、ココア淹れてよ。うんと甘いやつ」 「珍しいな」  甘い飲み物を欲しがることは殆ど無いので、カンナは立ち上がりながらエティアを見下ろした。 「昔、よく眠れなかったり落ち込んだときにグレイスが淹れてくれたの。懐かしくなっちゃって」  思い出のココアにどこまで近づけるか、高い壁だなと思いながらカンナはキッチンへと向かった。 END
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