第1章

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 カンナがSMSの隊服から部屋着に着替えてリビングに戻ると、エティアは先程と同じ状態で目を瞑りCDを聴いていた。  そっと物音を立てないように気を付けながら、エティアの横に座る。  プレイヤーからはカンナの所属するスカル小隊の隊長が大好きなバンド、FIRE BONBERの代表曲「突撃ラブハート」が流れていた。  歌っているのはバンドのボーカル熱気バサラではなく、隊長のキリナ・チェンとキャサリン・グラスの二人だ。  そんな二人の楽しそうな歌声に、つい笑いそうになったが、エティアが真剣に聴いているので邪魔しないよう我慢した。  「突撃ラブハート」が終わると、カンナにも聴き覚えのあるイントロが流れてきて、急に居心地が悪くなった。  そわそわしていると、気配を感じたエティアが一度プレイヤーを一時停止させてカンナに向き直る。 「何よ、落ち着かないじゃない」 「…悪い」 「ああ、これ、カンナが歌ってるやつね」  CDのクレジットを確認したエティアが笑いながらカンナを見た。 「お前に聴かれるのは何て言うか…」 「サンプル盤で先に聴いてるわよ」  あっけらかんとエティアに言われても、カンナは気が重かった。  相手は銀河を代表する歌姫で、音楽に対して厳しく、身内だからと言って甘い評価は絶対にしない。
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