第1章

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 エティアの発案で作られたこのアルバムは、SMSのメンバーなどを中心に全曲がデュエット構成になっている。  歌を録り始めたのはまだバジュラたちとの戦いも激しくなる前で、ちょうどカンナがエティアの護衛に就き、クレアがデビューした頃だった。  最初に言い出したのはクレアだった。 「FIRE BONBERの曲歌ってみたい」  兄のキリナが大好きで、よく家でも流れているFIRE BONBER。  デュエット相手を誰にする?という段階になって、グレイスが口を挟んだ。 「どうせなら、本人にやってもらいましょう」  どこに居るのかも分からない相手にどうやって?と皆が首を傾げると、グレイスは楽しそうに笑った。 「何も本人を探して…なんて言ってませんよ?クレアさんの歌う部分を決めて、二人がデュエットしているようにするのは出来るでしょう?」  そう決めてからのグレイスの早さは見事だった。  クレアの歌録りの前にはバサラのパートをしっかり調整してディスクに保管し、他の人たちにどの歌を歌わせるかのスケジュールまで決めていた。  エティアに「アイモ~鳥のひと」を薦めたのもグレイスだった。 「クレアさんとでは新鮮味がないから、マオ・ハーツとのデュエットにしたらどうかしら」 「そう言うってことは、おばあちゃんの声、サンプルあるのね?」  エティアの問いに、いつものように微笑んで「もちろん」と応えた。  折角だからと、エティアと同じくらいの年の頃の声に調整し、本当にその場でマオ・ハーツに歌ってもらったかのように音声を繋いだ。  同様の方法で、リン・ミンメイとミレーヌ・ジーナスのデュエット曲も作られた。  
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