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カンナとシュルクの歌う「小白竜」が終わると、次に聴こえてきたのはエティアの歌声だった。
エティアとマオの「アイモ~鳥のひと」である。
カンナは初めて聴くアイモに耳を傾けていた。
もちろんエティアの歌うアイモを聴くのは初めてではないが、マオと二人で歌うアイモはまるで別な歌のようで、心にじんわりと温かなものが広がるようだった。
曲の途中で隣のエティアを見て、カンナはぎょっとした。
エティアが目から大粒の涙をポロポロ溢していたのだ。
「エティア?どうした?」
カンナの問いかけに彼女は答えず、泣き顔を隠すかのように膝を抱えてその間に顔を埋めた。
声も上げずにただ涙を流すエティアに、涙の理由が分からないカンナはお手上げだった。
こんな時は理由を尋ねても答えないだろうし、理由が分からなければ慰めようもない。
下手に抱き締めようものなら機嫌を損ねて、ネコのように引っ掻かれかねない。
カンナはもう一度だけエティアの名を呼んだが相変わらずなので、エティアが落ち着くまでそっとしておくことにした。
その間に飲み物でも…とキッチンに向かおうと立ち上がろうとしたが、何かに引っ張られた。
見るとエティアがカンナのシャツの裾を掴んでいたのだ。
「ホットミルク淹れてくるから」
カンナが言っても手を離さないので、諦めてソファに座り直した。
いつの間にかプレイヤーのCDは再生を終えていた。
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