第1章

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 なかなか顔を上げないエティアを見て、カンナはそっと腕を回して彼女の肩を抱いた。  嫌がる素振りがないので、これは間違いではないようだと胸を撫で下ろした。  やがてエティアがゆっくりと顔を上げて、そっとカンナに微笑んだ。 「ごめん、驚いたわよね」 「いや、俺は大丈夫だけど…」  カンナはエティアの涙の理由を聞きたかったが、彼女から話すのをじっと待った。 「おばあちゃんの歌声聴いてたら、いろんなこと考えちゃって、止まらなくなっちゃったのよ。…ママはどんな声で、どんな風に歌ったのかなって」  エティアがイヤリングに触れながら静かに言うと、カンナはハッと息を飲んだ。  エティアが幼い頃に両親が亡くなり、ストリートチルドレンだったことは本人から聞いていた。  両親の記憶はほとんど無く、「アイモ」もクレアと同じ様に唯一覚えている両親との思い出。  微かに頭にあった歌詞は曖昧で、正式な歌詞はグレイスから教えてもらっていた。
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