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「ママはどんな人だったのかな?とか考えてたら、切なくなっちゃって。気が付いたら涙止まらなくなってたわ」
また少し涙が込み上げてきたようで、目が潤んでいる。
「普段はママのこと思い返すことなんて無いのになぁ。ママからはたくさんのものを貰ったわ。この美貌でしょ、イヤリング、歌声、歌、そして生命」
そこまで話すとエティアは言葉を切って、ソファに身体を沈めた。
「『アイモ』はやっぱり私たちにとって母の歌なのよ」
「私たち?」
「私とクレアちゃん。私たちはママが歌っていたのを覚えていたわけでしょう?だから母の歌なのよ。私の場合はママだけじゃなくて、グレイスが歌詞を教えてくれたから、そういう意味ではグレイスもママなのかしら」
「そうだな」
「ママもグレイスも私の近くには居ないけど、この歌が私たちを繋いでくれているって思うの」
嬉しそうにエティアが言うと、カンナも口許を緩めた。
「強いな、お前は」
「あら、当たり前じゃない。ハーツ家は代々女が強いのよ?」
胸を張ってエティアはそう言うと、両腕を上に伸ばして大きく伸びをする。
「あー、何かお腹空いてきちゃった。ね、ココア淹れてよ。うんと甘いやつ」
「珍しいな」
甘い飲み物を欲しがることは殆ど無いので、カンナは立ち上がりながらエティアを見下ろした。
「昔、よく眠れなかったり落ち込んだときにグレイスが淹れてくれたの。懐かしくなっちゃって」
思い出のココアにどこまで近づけるか、高い壁だなと思いながらカンナはキッチンへと向かった。
END
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