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「中津くん?大丈夫?」
気づいたらあのうるさい男子は、この場にいなかった。
新たに声をかけてきた人に、目を向ける。
いつも変わらない笑顔が、そこにいた。
「…相川か」
同級生の、相川玲だった。
「またなんか難しいこと考えてたでしょ?
怖い顔してたよ~?」
そういっておどけて笑ってきた。
…相川とは、高校に入ってから仲良くなった。
一年生の時も、今も、クラスは違うけど。
彼女は、他でもない『僕』に向かって、言葉をくれる。
『話を聞いてくれる誰か』を見てるんじゃなくて、
『中津奏太』、僕自身を見て言葉をくれるんだ。
そんな彼女といることは、嫌いではなかった。
…ただまぁ、
「悪いな…ちょっと怖かったか」
作り笑いしか、向けることはできないんだけどな。
相川は、僕の作り笑いに、本心に、気づいているんだろうか?
――――気づいているんだろうか?じゃない。
本当は、気づいてほしい。
そんな、心の奥で響いた言葉を、押さえつけて気づかないふりをした。
*
【イラスト:柚子ぽん様】![image=485711027.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/485711027.jpg?width=800&format=jpg)
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