プロローグ

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「じゃ、気を付けろよ」 今日、俺は新しい一歩を踏み出す。 住み慣れたこの家とも暫く お別れ、って事になるのか。 1歳年下の弟、凛太朗が微笑みながら片手を上げる。 彼は過度のツンデレ気質で 普段滅多に笑う事が無い。 「おう。寂しくなるな」 頭をワシャワシャと撫でる。 「さ、寂しくなんか、ねーしっ!」 説明した通り、早速 ツンデレが発揮された。 言っておくがこれが 素のままの凛である。 そんな最後の日常会話を 楽しんでいると、 奥からのそのそと父が出てきた。 「龍、しばらく会えねーからちゅーしよちゅー」 酒が回っているのかフラフラして頬を赤く染めながら意味不明な事を言い出す父。 まあ、酒が回っていなくても 元から呑気な父親だ。 その父がキスを求めているのは 俺の横にいる同じ顔、龍太郎だ。 こちらは一言で言えば冷酷人間 まあ彼の言動を見ていれば 分かることだろう。 名前がややこしいが龍が双子の弟で 凛が1歳下の弟である。 「嫌だよクソ親父が」 それを例えノリでも彼が許可することはなく父の頭にチョップをかます。 逆に今のを許可していたら ギャップがありすぎて 気持ち悪いほどだ。 「うぇ~ん、蓮、龍が意地悪」 甘えた声を出しながら俺に抱き着いてくる父。 ま、しばらく会えないし。と思ってぎゅっと抱き締めてやる。 「蓮、ちゅ、ちゅぅ!」 「はいはい、すりゃいいんだろ……ほら」 若干酒臭い相手の口に触れるだけのキスをする。 相手がそれを深いものにしようとして来たのでそっと胸板を押す。 小さい頃によくされた 覚えがあるな。 「うわっ、蓮ってホモだったのか」 横にいる龍が痛い目を向けて からかうように言う。 「うっせー、行くぞ」 相手のリュックの背中を叩く。 荷物を背負い直すともう一度家を見回した。 この大好きな家とも暫くお別れだ。 凛とも、父さんとも。 龍と一緒に旅立つ。 ホームシックになったり しないか少し心配だけど どうせすぐ遊びに来れるだろう。 「じゃ、父さん、凛、仲良くやれよ」 微笑むと父は元気良く「は~い!!」と手を上げるも、横の凛は「やだ」と即答した。
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