初めての喧嘩

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「……龍?」 俺の力に負けて飛ばされた龍が 奥で下を向き頭を押さえている。 髪の隙間から覗く目は酷く目つきが悪い。 「…………来んなっつってんだろーが!!」 いきなり豹変したように龍が飛びかかって 来たのは間も無くの事だった。 頬に重い打撃。素直に痛い。 「っ……どうしたんだよ龍ッ」 どうもこれは様子がおかしい。 立ち上がって相手の肩を持とうとする、も。 「触んな!!!」 また殴り付けられる。 「俺の事なんてどうでもいいくせに!!」 その瞳は怒りに満ち溢れて。 でも何処か今にも泣き出しそうで どうでもいい? 俺が龍の事をどうでもいいと思う訳が無い。 此奴は一体何を誤解しているのか。 「待てよ、俺はお前の事ちゃんと「またそうやって綺麗な言葉並べて俺を騙そうってか! てめぇみたいな他人が兄貴でショックだったよ!!」 冷たい、呆れたような声で言われた。 綺麗事だとか、他人だとか。 ふざけるな。 「そっちこそ……」 「あ?」 「そっちこそ俺がどんだけお前の事 心配してるかも知らねー癖になぁ!!」 思わず相手を殴ってしまった。 初めて本気で殴った。 こんな本気の喧嘩をしたのも、 きっと初めてだ。 それからどれだけ時間が経ったか、 お互いを殴り合い、怒号を飛ばし 散々疲れ果てた俺はいつの間にか 自分の部屋のベッドに寝転んでいた。 「何でだよ龍……」
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