初めての喧嘩

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次の日、学校に龍は来なかった。 というか一緒に行く約束だが 部屋から出て来なかった。 そんな事が何週間か続き流石に 心配になった俺は龍の部屋を 訪ねることにしたのだ。 隣の部屋、でも其処には 近付いてはいけないような気がして。 重い雰囲気を放つ扉の前に立った。 「……龍?」 そっとノックをしてから 声を掛けるも返事はない。 物音一つも無く、本当に中に人がいるのかと疑わしい。 中の風が微かに動く音が聞こえ来る ほど中が静まり返っているのが分かる。 「その……ごめん。この前は」 正直弟を殴ったことは自分としては情けないと思っていた。 相手だって悪いとは思う。 でも俺にだって勿論非はあった。 だから声に出して謝ってみた。 案外スッキリするものだ。 「その……何でお前いきなり?」 小さな声で呟いてもやはり返事は来ない。 独り言を言っているようにも思ってきた。 「開けてくれ無いか?」 恐らく何分か扉の前にいたであろう。 時が経つのも忘れていた。 ドアノブを回すも予想通り回ら無い。 「……駄目か。」 そっとため息を着く。 「ごめん、俺みたいなのが兄貴で。じゃあ」 そう言って立ち去ろうと振り返った時だった。 扉が開く音。 足音。 と同時に腕を引かれる。 連れ込まれたのは薄暗い、龍の部屋の中。 「龍……?」 状況がよく分からないまま 無意識に閉じていた目を開ける。 ……暖かい?
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