126人が本棚に入れています
本棚に追加
「……でも、何でお前俺と一緒に行くって?」
所変わって新幹線の中。
相変わらず耳がおかしい。
ずっと気になっていた事を聞く。
何度聞いてもはぐらかされて来た。二人きりの今なら。
「お前、俺と離れると調子狂うだろ」
相手が目を閉じて腕を組みながら言う。
まあ、確かに。言う通り俺は龍といないと少しおかしくなると言うか。
昔からそうだった。
本当に二人で一つ、みたいな。
でもそれは相手にも言えることだ。
「お前もだろ」
相手の頭をポンポンと叩くと”否定はしない”と言って軽く凭れ掛かって来る。
今日は妙に素直だ。
こんな風に懐く時もある。
ただし俺にのみだ。
でも言うときっと面倒だから口には出さないでおく。
そのままお互いに凭れ掛かりながら俺らは眠りについた。
*****
「おい、着くぞ、起きろエロ犬」
「うっせー起きてるわバカ猫」
子供みたいなやりとりで目を覚ます。目的の駅まであと5分ほどだ。
「にしても、学園都市の駅に新幹線って、すげーよな」
「だよな、国内最大級の学園都市といっても驚きだ」
珍しく俺の意見を肯定する龍、少し嬉しくなってニヤけてしまう。
「何ニヤニヤしてんの、キモ、変態」
「変態で結構、ま、お前には負けるけどな」
「エロ犬に言われたくねーし」
こんな些細なやり取りだが、
いつも出来る事では無いから
俺には特別なことだ。
「っにしても、可愛い女の子いっかな~?」
さっきあれだけ言っておいて普通に切り出す龍。
「好きな人、被ったらどうする?」
「お前なんかと俺の趣味一緒にすんじゃ……まあ、一緒だな」
途中まで言いかけて渋々折れる。
性格は多少違えど、恋愛面や性癖に関しては全く同じだ。
以前も同じ女を好きになって喧嘩した事がある。
「また喧嘩すっか」
「もう餓鬼じゃねーんだから」
会話を楽しみながら苦笑する。
そんな事をしている間に間も無く到着とのアナウンスが響き、電車がゆっくりと停車して行く。
「「あの子可愛い」」
ほぼ停車しかけた時、窓越しに同じ女子を指差す。
「……あ」
「……お、おう」
目を合わせるとじっと見つめ合う。
かなり時間が経ったような気がしてやっと扉が開いた。
一目散に荷物を持って走り出す。
「待てエロ犬」
後ろから龍が追いかけてくる。
今日の彼は分かりやすい。
最初のコメントを投稿しよう!