早々に文化祭

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この学校では年に2回も 文化祭があるらしい。 入学して可愛い子探しに 熱心になっている暇はなく、 文化祭の準備を強いられる。 「んー、で、このクラスは 何をするか決めたいが…… クラス委員が決まっていないな。 誰か立候補する奴いるか?」 石狩の一言で皆が周りを見渡す。 「私、やります」 そういって起立した人物に 皆の視線が集まる。 長い黒髪を持った綺麗な人だ。 顔はクール系などではなく 可愛らしい、が似合う。 「お、田臥、やってくれるか」 皆から盛大な拍手が送られる。 彼女はニコニコと笑いながら 周囲にお辞儀をしている。 とても律儀な人だ。 女子は安堵しているが 男子はまだ、誰かが 立候補しなくてはならない。 「ほらほら、男も頑張れ」 皆が皆、やりたくないオーラを 醸し出している。 ざわざわと相談する声が 聞こえる中、その田臥が 声を発した。 「あの、私は穂坂くんが 良いと思います」 「うぇぇっ!? 俺すか!?」 俺も驚いて前の鏡哉を凝視した。 小学校なら元気のいい奴が リーダーになるのが自然だろうが、 高校では恐らく違うだろう。 男子たちは鏡哉を 囃し立てている。 「学校では元気な方ですが、 先程私が道に迷っていた時に、 とても親切に案内してくれました。 本当にしっかりした男性、 という感じがして頼もしかったです」 彼女はニコニコしながら話を続ける。 確かに鏡哉はいつも元気だが いざと言う時頼れる奴だし、 根はしっかりしている。 男子からは別の意味で 冷やかすような歓声が上がり 女子はコソコソと楽しそうに 話を始めた。 当の本人は褒めちぎられて 真っ赤な顔をしている。 「えっとぉ、そ、その! 俺でよければっ、がんばりまっす、!」 動揺を隠しきれず 震えた声で彼は言った。 友人がクラス委員というのも なんだか微笑ましい感じがする。 「じゃあ二人とも、前へ」
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