早々に文化祭

9/23
前へ
/92ページ
次へ
「今日中に飼い主見つかるといいけどなぁ」 リビングで猫を撫でながら言う。 龍と半分取り合いながら。 「これは俺の猫だ」 「いや今飼い主見つかるといいなって 言ってたとこだよなッ?」 何てツッコミをしていると 龍に猫を独り占めされてしまった。 「荘の中で預かっててもあれだし、 外で呼びかけてみろよ」 酒の入った瓶をそのまま飲みながら 石狩先生が言った。 「んー、やっぱそうっすよね」 チラッと時計を見る。 さっき帰ってきたところで 今は4時15分。 新学期の始めで活動している 部活が少ないこのシーズンなら、 多くの生徒が下校していたり 広場で駄弁ったりしているだろう。 本人がいなくてもこの猫の事を 知っている人がいるはずだ。 「よし、龍行くぞ」 猫と一体化を試みる龍を 強制的に引っ張って荘を出た。 取り敢えず少し学校側へ戻って 荘並びの道の入り口に当たる 広場の方へ行ってみる。 予想していた通りたくさんの女子生徒が ガールズトークを楽しんでいたり 中には鬼ごっこをしている生徒たちもいる。 最後に鬼ごっこをまともに したのはいつだったか…… 「この猫飼ってる奴、知んない?」 俺がそんな事を考えていると 龍が尋ね始めた。 俺が聞くことになると思っていたが きちんと猫の事も考えているようだ。 侮れない。 龍が尋ねた女子生徒3人は 顔を見合わせ、1人が代表して 知らないと軽く謝った。 何だか龍が普通に見ず知らずの 相手と話しているのは とても新鮮な気分だ。 俺も負けじと頑張らねば、と 聞き込みを開始した。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

126人が本棚に入れています
本棚に追加