早々に文化祭

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ついに文化祭も明日となった。 昨日の衣装の試着は女子から始め、 半分ほどの男子は今日衣装を 初めて見る事になる。 最初に着たのは圭太だった。 「お。圭太、似合ってるな」 「おうおう!かっこいいぞ!」 薄い紺色を基調とした、 祭りの浴衣に近いような 圭太の和風は、彼の綺麗な 茶髪と見事に調和しており、 女子から黄色い悲鳴が 上がるのは間違いなかった。 「へへ、俺は何を着ても似合うからなぁ」 「お前最近そういうキャラになったな」 「最近っていうかもうちょい前から。 いつの間にか」 俺の知っている圭太はもう少し、 真っ直ぐで情に厚いというか 真面目な勇者タイプの人間だった。 今はもう少し崩れたというか、 真面目さが薄れたように思える。 かといって今の彼が嫌いな事はない。 「次、弟さんの方!」 このクラスで兄と弟を 区別して呼ばれるのは 俺と龍しかいない。 そもそも同学年で区別されること自体も 双子という低確率な形態で 生まれてこないと無いもんだから、 これは特別だ、と喜ぶべきなのか。 龍は不機嫌そうにしながらも 体操服の上から着付けをしてもらった。 「何、かなり似合ってるじゃん、弟くん」 衣装班のリーダーの女子が 龍の周りをくるくると 回りながら言った。 龍の衣装は薄い青色の 圭太のより硬めのものだった。 俺と龍は和風顔と言われがちだ。 だから、まあ似合わない事は無いだろうと 思っていたが、龍の体格に きちんと合った和服は 何の違和感もなく彼を飾っている。 「おー、龍太郎もすげー!」 「龍、心配しなくても似合ってるって」 当の本人はいつまでも 溜息をついているのだった。
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