仮面の女王

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「仕事の時くらい笑えよ?」 「分かってるし、にー」 まさか真顔で接待する気では ないかと心配して忠告したが、 さすが演技派、満面の笑みを 浮かべている。 「てか俺らペアで接客すんの?」 「お前なぁ…何回ミーティングで その話をしたってんだよ」 今回の茶屋の売りとしては、 俺と龍のツインウェイター、 美人三姉妹とでも言うのだろうか、 かなり凝った女子3名の和風ドレス、 そして自慢の内装である。 この3つについてはかなり 大きなテーマとして会議で 話したはずだが、 さて、寝ている訳でも無かったのに 此奴は一体何をしていたのか。 「開店1分前です、スタンバイ!」 みんな意気込み十分という状態で 臨んだがやはり和服で接客と いうのは中々ハードルが高い。 緊張するが龍と一緒なら 大して問題ないだろう。 「何、緊張してんの?」 まさに図星を突かれて 目がまん丸になりそうになったが 表情を崩さずに否定をした。 「俺はしてる」 帰って来たのは意外な答えだった。 龍は俺の手を自分の胸に当てさせた。 鼓動が手に伝わってくる。 顔は平然としていて余裕そうなのに、 あまりに中々心拍数が速い。 「やっぱ双子だな」 俺の胸の音を聞いてもいない 龍は、悟ったように言った。 思い切り読まれた気がして また腹立たしい気もするが。
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