仮面の女王

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「穂坂くーん?」 何を言っているのかハッキリ 分かる位置までやって来て 間もなく、ドアの右側の窓ガラスに 黒い影が映った。 「だ、誰だ?アイツならさっき……」 俺が立ち上がり入り口の方へ 近付くと、スッと窓の端に 障害物が無くなり、クリアになった。 急いで教室の扉を開けて顔を出す。 影が逃げていった方の廊下、 誰もいない。15mほど先に 左へ曲がる道があるのみ。 速い。 「……鏡哉、大丈夫か?」 振り返って隠れている鏡哉の 元へ駆け寄る。 「大丈……夫、」 口ではそう言うが全身汗びっしょりで 熱があるように見える。 今の影に対する恐怖心だけで こうなるとは思えない。 「保健室。行こう」 「いや…俺今から仕ごt 「アホか、いいから乗れ」 と言い放ち鏡哉を半分無理矢理 背中に乗せる。 俺が172、3で鏡哉はそれより 少し高い。こう見えて以外と 彼は筋肉があるので結構 屈んだ状態でもずっしり来る。 「蓮……ッ、俺、重いから……」 「あー?舐めてんのかお前?よっと……」 少しふらつくが何とか立ち上がれた。 「……小学生の時以来……だな」 「あー、お前がジャングルジムから 降りて保健室まで運んだっけ? ははっ、スーパーヒーロー、 ミラーナイト様だー! とか言ってたらバランス崩して 落ちたんだよな、お前ッ」 クスクスと笑いながら思い出す。 鏡哉はずっと変わらない。 俺の知ってる鏡哉のままだ。 ただ少し変わったとすれば、 昔より頼もしくなった。 男らしくなった。そう思う。 「ははっ……懐かしいな…」 「まぁお前なら成長してないから またやり兼ねねーけどなっ」 「うぇっ……、ちょ、ひでーよ」 「ほら、着いたぞ保健室」 昔話に浸っているとあっという間に 目的地に到着した。 扉を開けると誰もいなかった。 あぁ、今日は文化祭だから 救護用のブースが運動場にあるんだっけ。 よく見るとベッドの数がいつもより 少なくなっていた。 取り敢えず一番近いベッドに 鏡哉を寝かせる。
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