仮面の女王

12/22
前へ
/92ページ
次へ
「俺……俺…………」 「おう、どうした?」 少し動けば触れてしまう距離に 鏡哉の顔がある。 お互いの小さな息が熱として 肌に伝わり合っている。 こんなにドキドキするのは何故なんだろう。 「俺ッ……、…………」 いつも呑気な彼の表情が 少しずつ崩れ始めた。 声も軽く震えている。 「田臥……に、……縛られて……」 縛られた?どういう意味だろう。 つまり田臥と恋人関係になったが 少し束縛されて困っている、と 言うことか? 「束縛か……嫌だよな。 それはー、えっと「違う……」 首を振りながら俺の手を握ってくる。 どこかの指の付け根から 微かに鼓動を感じた。 「……放課後に呼びだされて…… 縄で、縛られて……痛いこと…… 恥ずかしいこと…………、」 縄で縛られた……? ……それって要するに、 よくドラマとかである監禁して 色々されるって奴……と同じ? 「その……それって、 叩かれたりとか、服脱がされて 変な事されたりとかって事か?」 「……そ、う……うぅ」 俺の肩に顔を埋めた彼はおそらく泣いている。 声ももう制御が出来ないほどに 裏返っていて、よほど怖くて 嫌な事だったんだと分かった。 「……怖かったな。大丈夫……」 俺に出来ることはこれくらいしか ないけど、とぎゅっと抱き締めてやる。 「蓮……れんんんんんんん!!! うわぁぁぁぁぁんんん!!」 俺を強く抱き締めて泣きじゃくる彼は 怖い夢を見た子供のようだった。 俺が鏡哉を守るような 場面はないと思っていた。 でも今回みたいな事があったら、 ちゃんと守ってやろう。包んでやろう。 「大丈夫……俺が守る」 「蓮っ、、んんんん!!うぅわぁぁ!」 きっと外に丸聞こえだろうけど、 そんな事はどうでもいい。 今は鏡哉を恐怖から解放してやりたい。 いつも頼ってばかりだから、 俺が助けてやる時が来たのだ。 鏡哉はその後、何十分かの間、 俺の腕の中で只々泣いていた。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

126人が本棚に入れています
本棚に追加