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連行された部屋では前から、横から写真撮られました。
次に身長、体重、丁寧に10本指を回すようにして指紋もとられました。
そのあと、おねえさんぐらい綺麗だったらこんなことしちゃうのもわかる。とか、お世辞だか皮肉だかそんな適当な会話の途中途中に、次から次へと出てくるのは、
ホストクラブで知り合った女の子を朝方の喫茶店で口説く姿、
ネオンひしめく道端で団体のギャルに果敢に声をかける厭らしいわたしの姿の写真でした。
さらに、そのギャルらが何人ものオジサンとホテルに入るいかがわしい姿の写真。
そして極めつけはどこで撮ったのか? と思うような朝倉から札束を受け取る嬉しそうな、わたしの姿。
恐ろしくて失禁寸前です。
いよいよ視界までもがおかしくなり吐き気を我慢していたところ、救いの妖精が降臨するのでした。
『あなたに、チャンスをあげるわ』(きらきら)
金髪の巻き髪に白い透けた布きれ一枚で体を包む私です。
はわわわチャンスですか……マジですか……
こんな、あたいも、まだ生きてて良いのですか?
妖精にそう言うと
『あなたは、まだ生きるべきよ』(きらきら)
と、妖精は答えました。
うなずくと、美化した半透明のわたしは目の前から、微笑みを残して消えていったのです。
『がんばってね☆』と。
その時、“世界線”はズレたのだと思います。
わたしの口が滑らかにまわりだしました。
「この人です!」
と、目に一杯涙をためながら震えるか弱い乙女な指先は、一枚の写真に写る朝倉を指さしていました。
・朝倉に脅されてしかたなくやった。
・朝倉に弱みを握られてる。
・自分は被害者であり非常にかわいそうな存在である。
と。
良いタイミングでこらえていた涙もダムが決壊したかのように流れ出したのです。非常にナイスなのでした。
この涙も感情が高ぶりすぎて、もうなにがなんだかわけわかんなくなって出てきたもので、完全にナチュラルにキマった状態でした。
あることないことベラベラと自己弁護は加速します。わたしだけは助かりたいのです。
朝倉やら身内を売りに売りまくりました。
〈つづく〉
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