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わたしはブランド品を買いあさり、毎晩豪遊しました。
遊んでいるうちは、まだかわいらしくて良かったのですが、当時関西で一人勝ちしていた完全なあちら側の人間である“朝倉”とも手を組み、高級ホテルに連泊しながら学校に専属のタクシーで行くようになった、そのあたりからはいよいよと可愛いげが無くなくなっていきました。
朝倉と組んでからは条例違反になる女を抱かせるよう仕向けることで弱みを握り、桁違いの金をゆすり、権力まで奪う。
そうすることで得る収入は金銭感覚の麻痺したわたしでさえ、震えました。
そうなりますと、先生を飼い慣らすことも容易く内申点を上げてもらい、有名私立大学の推薦もなんなくいただきました。
若気の至り。・・・という範疇はゆうに超えていたのだと今では思います。
もっとも、当時はそんな言葉は知りませんでした。
使い切れないほどの金をバラ撒き、欲望のまま加速してゆき、気がついた頃にはものすごいところにたどり着いていました。
人の道を外れて、たどり着く場所なんてものは大概、同じ場所です。
わたしも例外ではありませんでした。
ある冬の始まりの雨の日の朝のことです。
デートクラブの内のひとつが摘発されたという連絡がわたしに入りました。
「デープスの店長がパクられただけだから、オマエにまではたどり着けない。だから、気にすることはない。じゃぁな」
気味が悪いゆっくりとした口調で、朝倉は用件だけを伝えて通話は途切れた。
備え付けの大きな鏡で携帯を持つ自分の最悪な顔色を見た。
「やばいんじゃないの?」
鏡に話しかけてみました。
「まあ、大丈夫でしょ」
と、わたしは返事をします。
ぼんやり考えてながら、のろのろとした足取りでエレベーターに乗り、ホテルのエントランスから出た瞬間に、心臓が大きく跳ねあかりました。
というのも、いつものように呼び出していたタクシーの前には白いクラウンが止まっていたのです。
タクシーの運転手と2人組の男がなにやらを話しています。
その2人組の1人が、こちらに気がついて早足で近づいてくるや傘で覆うようにして黒い手帳を見せてきました。
太く威圧感ある声で、「わかるよな?」と、近づいてきた男が言い。
「はい」と、答えるとそのまま白いクラウンに乗せられ連行されました。
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