溶け込めない絵の具

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女に踏み潰された頭、顔が時々頭にちらつくときがある。 窓から見下ろした人形のように整った顔を思い出すと体が震えるとき上がる。それはあのツギハギの物の怪よりも恐ろしく、近頃視界によく映り込む妖よりも恐怖を感じた。 『やっぱいるよな・・』 気にしない方が良い、薫にそう言われてから意識しないように忘れるようにしたもののそれは無意味に終わった。 近頃気づいたが自分の通っているこの私立の学園には人間以外のものが多いらしい。誰も気づいていないのか、特に何も言わないが物の怪の一部部が見える時があるのだ。 最初こそ驚いたもだが最近は少し慣れてきたので見ても気にしないようにしている。 「和月、今日はお迎えじゃないの?」 「あー今日は清音だ」 「そっか」 双子の妹の清音が今日は恵のお迎えで少しばかり薫が残念そうにしている。清音は親に言われて別の高校に通っているので一緒ではない。 「じゃ、まっすぐ帰るかなー顔見たかっただけだし」 「そうか?あれなら遊びにくりゃ良いのに」 「んー用事あんのよねーまた今度いくわ!」 こうして薫と話している間は不思議と周囲のことは気にならない上に不可思議なものは見なくなる。そのこともあって学校ではよく一緒にいることが多くなったが最近薫の付き合いが悪い。 「お前バイトでも始めたのかよ」 「そんなんじゃないけど、女にはいろいろあんのよ!」 笑ってそういう薫に特に違和感を感じたことはない。彼女は普通の人間なのだろう。そのことに毎日毎日安心してしまっている。 さきに歩いて行った薫を見送って周囲を見ればあっという間に非日常へ戻る。でも本当はこっちが当たり前だったのかもしれないと考え始めたときおもうことがあった。本当は自分もこちら側だったのではないかと。それを考えるだけで冷たい汗が流れる。 和月は深く息を吐いて首を振った。 「帰るか」 気にしてはいけない、考えすぎてはいけないと薫が行っていたじゃないか、と。 自分が知らなかったことを知ることがこれほど恐ろしいことだったとは知りもしなかった。 けれどいつかは誰もが経験することで、今回は内容が衝撃的すぎた。 「俺が知らなかっただけだったんだよな・・・」 呟いて、そのあとは夕食のことを考えることにして、校門を抜けた。
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