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和月が頭を悩ませている帰り道、双子の妹の清音もまた同じような心境になっていた。
「はー・・・」
「きよねーちゃ?」
「んー何かね恵ちゃんよ」
「ぽんぽイタたい?」
「痛くないよ」
小さな妹に心配されるほど浮かない顔をしていたのだろうかと苦笑する。悩みの種は近頃様子のおかしい双子の兄のことだ。
最近なにかから隠れるような、何かにおびえるようなそんな仕草をよく見るのだ。
和月が何を恐れているのか、何を思い悩んでいるのか、双子でなくともわかるのは自分も同じだからだ。
でもそれはもっとずっと前から自分はそうだったのだがそれは母にしか言っていない。
もし家族に言って嫌われてしまったら、母にしか言えなかった。
母はただ苦笑いをして「そっか」と一言言って怖いものが見えなくなるお守りに珠の着いた髪紐をもらったのは小学生の頃だ。
母もそういう類のものを見る体質なのだと言っていたけれどそれだけではないのだろうとは思っている。けれど追求したところで大人にははぐらかされる、そうわかっていた。
だからおとなしく父から継いだ色素の薄いミルクティー色の髪を伸ばして結い上げたのだ。
「・・・」
「きよねーちゃ」
「ん?どうしたの、おうち帰るよ」
「くろい」
「ん?」
考え事をして歩いていると突然隣を歩いていた恵が足を止めた。
なんだろうと思い恵を見下ろすと、恵はじっと前の方を見て指をさすが自分の目には何もうつらない。
けれど恵は「くろいの、おっきい」という。
そこで恵は自分が見えてきていたよりももっと幼いというのに見えていることに気づく。恵の目がきょろきょろと動いてきている。近づいているのだと気づいて恵を抱き上げた時にはもう髪留めが髪と一緒に引きちぎられていた。
「っ・・!!」
「うぎゅっ・・きよねーちゃ!」
「恵、落っこちないようにしがみついてて・・!」
久方ぶりに視界に入ったそれは黒くいびつな形をしている。
物の怪としての形もなく人の面影もない、けれどそのくろい塊は人の霊魂というわけでもない、あれは物の怪を食ったのだろうか、と清音の思考がそこまで回るがそれがわかったところで現状は変わらない。家に帰ったりしたら母まで巻き込んでしまうかもしれない。
どうするのが正解か、わからないまま背後の気配からひたすら逃げていると見覚えのある背中がこちらを振り向いた。
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