溶け込めない絵の具

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よくよく見るほど気味が悪く纏う空気もジメジメしている。 腹の底から怒りにも似た恐怖が沸き上がってくるのを二人して感じているがそれよりも今はこの状況をどうするかを考えるだけだ。 恵が今どこまで走ったのか、人に会えたのかもわからない不安。 「とりあえずカバンで殴ってみるうううおおおあ!!」 こちらから仕掛ける前に鋭い爪を持つ手を伸ばしてきたためそれを避ける。幸いこのあたりは人気がないため派手に動き回っても変人扱いされることはないだろう。 伸びてくる手をどうにか避けながらどうにか撒けないものかと必死に頭を動かすがどうあっても打開策は出てこない。 ひたすら避けるだけの動きの中、清音の足が地を這っていた三本目の手に取られて地面に倒れこむ。 「清音!!」 鋭い爪が目の前に迫り、もう終わったと目を閉じかけた。 けれど痛みは目を閉じてもなく、恐る恐る開いてみると物の怪の腕は氷漬けにされ低く唸っている。 「あ、お前・・って恵!!」 「うううー・・!!」 あの夜に、あの夜明けに見た青い色の女だ。 間近で見れば彼女は自分たちとあまり年が変わらないような見た目をしている。その腕に抱かれた恵は泣いてはいるものの怪我もしていないようで安心した。清音は初めて見るのだろうが特に何も言う様子はない。 「ほら、行け」 鼻水を垂らしながら女の腕から降りて走ってきたかと思えば恵は自分だけを走らせた和月と清音をポカポカと殴っている。 「大事な妹ならしっかり抱えてさっさと失せろ」 低くもなく、高すぎない声で和月と清音に言うのは目障りという理由もあるのだろうがなにより関わらせないためなのかもしれない。 彼女には恐怖を抱く。けれど彼女は人間に危害を加えているわけではない。 「お前、なまえは・・?」 「教える義理はない。はやく行けよ」 自分たちと物の怪の間にたつ彼女は答えず、ただはやくこの場から消えろという。無駄な関わりは持たないためキツくいうのだろう、と前向きに捉えてその場から三人で離れていく。 残された女は氷漬けにした物の怪にただ触れて中から氷漬けにして、ひょいと飛び上がり、カンと音を鳴らし踏み台に飛び上がればバラバラと砕け散っていった。 それを横目に電柱からまた屋根へと飛び移りそこにはまた何も残らなかった。
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