溶け込めない絵の具

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しばらく走ってようやく歩く頃に、清音が口を開く。 「あの人、見たことある・・・小学生の頃」 「は?」 「顔も、声も変わってない・・・人間じゃ、なかったんだね」 ゆっくり歩きながら聞いた清音の話を聞いて和月は目を丸くする。幼い頃から見えていたということも驚いたがなによりあの女が人間ではないということに。彼女はああいうモノから人を守るために動いている、それがわかっただけでも少しは収穫だったのだろうか。 「髪、切らないとな・・・髪ひももどっかいっちゃったし」 逃げるのに必死すぎて全く気がつかなかったが清音の髪はあの物の怪によってバラバラにちぎられていた。半分だけが長い髪を抱えられた恵が触っている。 「これからは」 「もっと関わることになるよ、きっと」 「だよなー・・」 「よく知るべきだよ、今の現状」 「だな、母さんはなんて?」 「ただ見えやすい体質だって」 二人して深いため息を吐き出し、帰路を行く。 家に着いてから母に事情を話せばやっぱり母は苦笑して、自分によく似た末の子を抱えて「ごめん」と呟いた。 何か隠している、そのことだけはわかった。 しかしこの日はとても疲れてしまったために追求することもなく、清音は髪を短く切って、和月は部屋にこもってこの地域のことをとにかくネットで調べ、その手に詳しい人間も探しておいた。 何も知らないまま見ないふりではどうにもならないのだから。 食事をして、風呂に入って、布団に入る。 どうにか日常に戻り終えようとしたとき、ふと思い返す。 恵はどうしてあんなにおとなしく抱えられていたのか。 普段から人見知りはしないがあんなに異様な空気を纏う女に抱えられて暴れもしていなかった。 聞いてみようにも恵はもう眠っているし、聞いたところでうまく説明はできないだろう、そう考えてきくのはやめておき、明日一日を無事に終えることを考えて目を閉じた。  
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