音に惹かれて

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初夏をすぎ、暑い七月の夜。 この街で大きな夏祭りがあり、それは毎年のことで人が多く集まる。 ここが地元である和月たちも毎年友達か家族と祭りへ行っていた。 「薫、お前今年こそ祭り行こうぜ!」 「あー、ごめん。今年もじいちゃんとこ行かないとダメなのよー」 毎年、毎年妹たちと、それから薫を誘って祭りへ行こうと思うのだが毎年断られるのだ。それはほかの友達と行くのでもなくただその日に祖父の家に行くという。祭りは二日間あるのだからどちらか一日だけでもと言ってもそれも来られないと。 「また来年誘ってみてちょうだい」 「どーせ無理だろー」 「多分ね。まあ恵ちゃんと清音ちゃんと仲良くいってらっしゃいな」 「おー」 「まだ恵ちゃん小さいんだから、はやく帰りなさいよ」 小さい頃は親と一緒に行っていて遅くなることもなかったが中学生くらいともなれば友達同士で行って遅くなることもあるために、それくらいの頃からよく薫がいうのだ。 早く帰りなさい、と母親のようなセリフを。当然うちの両親も同じことを言うのだが、大抵は恵を連れているので言われずとも帰宅は早くなるだろう。 和月は適当に返事をして、帰り道手を振って別れた。 家に帰ればすでに浴衣に着替え始めている清音と甚平を着せられている恵がいた。すっかり準備を終えている二人に急かされて自分も甚平に着替えると三人で祭りへ向かう。 近づくにつれて少しずつ人が増えていくのを見ると恵を抱き上げて清音と二人並んで歩く。 ふと横目で見た妹の短くなってしまった髪型も今ではすっかり見慣れてしまったなと思う。 そんなことを思っていると少しずつ進むペースが遅くなっていく。 長い一本道にずらりと並ぶ屋台に人が足を止めるためどうしても進みにくい。こうなると自分たちも屋台で適当に買いながら歩いて抜け出せたら公園に行く、それが毎年のこと。 あれが食べたい、これが食べたいとあちこちを指差している恵の言葉を聴いたり聞かなかったりしながら甘いわたあめや、焼きそばなどを適当に買って、公園に行く。 「ふあふあー」 「後でな、先に焼きそば食えよ」 どうしてもわたあめが気になるらしい恵の口に焼きそばを食わせながら清音と学校の話をする。双子で男女仲が悪くなることもなくこうしてよく話す。
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