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無事日常へ戻ってくることのできた和月であったが一度沼にハマってしまった足というのはなかなか抜け出せないものなのだろう、校舎内でおかしなものを目にしてしまった。
「は・・あれ・・」
自分と同じ制服を着ている男子生徒の頭から伸びる曲がった悪魔のような角、女子生徒のスカートの中から伸びる尻尾。
授業を終えた放課後のことだった。けれど誰も驚いた様子はなかったから自分以外にはみえていないのだ。
一体自分はどうしたというのか、目がおかしくなってしまったのか。昨日の出来事から、夢から抜け出せていないのか、思わず目をこすったそのとき、ポンと誰かが肩を叩く。
「っ!!」
「和月、なにボケっとしてんのよ。廊下のど真ん中で邪魔になるわよ」
気の強い口調と声で引き戻される。
目の前の生徒は何のへんてつもないただの人間に変わっていた。
昨日の恐怖感で少し幻覚を見たのかもしれない、そう思うことにした。
「神谷、一緒に帰ろうぜ」
「いやよ、なんでアンタと帰んなきゃいけないのよ」
「今日は恵のお迎え俺なんだけど?」
「恵ちゃんに会うためだからアンタと一緒に帰ってあげるわ」
和月には少し年の離れた妹がいる。子供が好きな幼馴染は恵をよく可愛がっているし、恵もまた彼女によくなついている。
最初こそ断られた下校のお誘いも受けてもらうことに成功して二人並んで帰路を行く。
その帰り道におかしなものを見ることはなく妹のいる保育園へと到着したのだが、なにやら騒がしい。
悲鳴が聞こえるのだ。それは子供が泣き叫ぶものと大人の女の叫ぶ声。それは子供の喧嘩の声でもなく、子供を起こる先生の声でもない。門をくぐって恐る恐る中に入れば窓に張り付く無数の黒い影。
「う、あ、・・なんだよ、アレ」
「なに、なんかいるの?」
薫には何も見えていない様子でわけがわからないという風な顔をしている。部屋の中を見れば全員が見えているわけではないらしく叫んでいるのは先生がひとりに子供が半数。ほかの子供と先生は訳が分からず突然のことで精神的に何かが起こったものだと思って救急車を読んでいるらしかった。
あれはこの世のものではないのか、人ではないのか。
よくみれば泣いている子供の中で呆然と立ち尽くしている妹の姿がある。
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