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恵が薫から離れたくないと言ったのは遊びたいのはもちろんだが、彼女が来た時に恵が見ていたお化けがいなくなったからだ。
それに気付いた薫はいつも身につけている水晶のブレスレットを恵につけた。
「あ、お前それ」
「いいのよ、いっぱい持ってるから」
「なあに?」
「これはね、怖いお化けを追い払ってくれるのよ?だから大事に持ってなさいね。」
「ほんとに?おばけこない?」
「来ないよ!だから私がいなくても平気。今日ははやくお風呂に入って、ご飯をたくさん食べて寝るの。また今度遊ぼうね」
「うん」
約束ね、と指切りをして薫は帰っていく。
その日の夜、夕方にあんなものを見たにも関わらず恵は怖がることもなくよく眠っていた。
けれど和月は気づいてしまった、外を徘徊している気配に。
本当はずっと、毎日家の前を行き来していたのだろうその気配に今日になって初めて気がついたのだ。
もう頭の中がぐちゃぐちゃになってしまいそうだった。
隣で幼い妹はよく眠っているのに自分は明け方になっても眠りにつくことができず、どうしたものかと天井を見上げる。
ズルズル引きずるような音と気配に気をやると余計に眠れず気がつかれてしまうのではという恐怖がこみ上げてくる。
時計が四時をさしたとき、ふと気配が消えたことに気がつく。
ーカツンー
と聞いたことのある音が耳に届いた。
「!!」
驚いて布団から飛び起きてカーテンを開くとそこには女が立っていた。こちらを見上げていないために顔までは見えなかったが、明け方の淡い青のような髪色の女だけがそこにある。
きっとそこにいたはずの異形のものはそこにおらず、彼女が消したことは容易に理解できた。
「おい!あんた・・っ!!」
声をかけてこちらを見上げた彼女の顔は人形のように白く、動かず、綺麗だとも思った。だがそれ以上に恐ろしかった。
温度を感じられない冷たい青い色、それが彼女に対する印象で、だが彼女はこちらに何をするでもなくそのままその場から姿を消した。
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