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僕は『元娼年』の黒衣エネ。
知り合い以外は『妖刀』とか『濡れ鴉』とか言う通り名で呼んだりする。
前者は妖刀・黒衣の所有者だから、後者は…あんまり口外したくない理由で呼ばれてる。
さて、今の状況を簡単に説明しようかな。
一応男子の僕は何故かフリルたっぷりの純白超ミニワンピースを着ている。
髪飾りもご丁寧に百合の花を象ったヤツに変えられたし、腰には純白のリボンまで付いている。
そんでもって、パシャパシャ写真を撮られてる。
「橙空さん…もういいでしょ?」
「ダーメ♪まだまだ撮り足りないしね。」
何故かこんな姿の僕を激写するのは橙空さん。
そう、この衣装は橙空さんに着せられたものだ。
サイズピッタリ(ミニ過ぎるのを除けば)で、採寸したんじゃと思うようなそれには寒気を感じるほどで、この人はどこからこんなのを持ってきたのか、全くの謎だ。
「よーしっ、エネ君次はこれ着てみてよ!」
「うわぁ、ベッタベタだね。こういう趣味なの?」
次に差し出されたのは白黒の伝統的スタイルなメイド服。
「いやぁ、だって凄く似合うと思ったから。」
さいですか。
愚痴を言いながらも着るためにワンピースを脱ぐ僕もなかなかダメだね。
ま、コスプレなんて娼年時代によくあったことだし、慣れだろう。
慣れって怖い、着るのにあんまり抵抗無いし。
「はぁ、貧相な身体。」
むしろ嫌なのは、自分の身体。
鏡に写るのは、痩せてて男らしさの欠片もない色白な男女の区別も曖昧な気味の悪い人間。
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