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目次
プロローグ
第1章 二つの焼死体
1.目撃者
2.捜査会議
3.合同捜査
第2章 追跡
1.徳田犯人説
2.死亡被疑者の送検
3.真犯人の影
第3章 自白
1.余命宣告
2.肉迫
3.病床の告白
第4章 真実(まこと)の愛
1.疑惑
2.死に際の真実
3.真実(まこと)の愛
エピローグ
プロローグ
その1
埼玉県との県境にある都内の○○駅から歩いて五分ほどの場所にある××ホテル最上階のバー・エレクトロアートでは、今夜も、大人の時間を楽しむ客たちが静かにグラスを傾けていた。
眼下には、遠くに池袋や新宿方面の夜景も見渡せる。
美しい夜景を堪能できるシチュエーションであるにも拘らず繁華街としての知名度が低いこともあってか、テレビや雑誌などで取り上げられたことがない。そのため、知る人ぞ知る穴場的な存在となっていた。
軽快なジャズ音楽が流れ、客たちの会話を楽しむ声とともに、ときおり笑い声も聞こえてくる。
店内はブラウン色で統一され、窓辺に等間隔に配置された二人掛け用のカウンター席には、何組かのカップルが肩を寄せ合っていた。席と席の間には目に見えない透明のカーテンが張り巡らされており、カーテンに囲われた空間の中で男と女の過去と未来が語られていた。
穏やかで甘い空気が、窓辺の一帯を支配する。
そんな中、端のカウンター席で、人目を避けるようにグラスを傾ける一人の男の姿があった。
男の表情からは、悲壮感のようなものが浮き出ていた。大人の会話を楽しみながら静かに酒を飲むこの場にはそぐわない空気を漂わせている。
黒服に身を包んだボーイたちも、男が発する異様な雰囲気を察してか、端のカウンター席には近づかない。
何者をも近づけない重たい空気が、男の周囲を取り巻いていた。
男は、グラスを手にした。中の氷がバランスを崩し、カチャと音をたてる。氷で薄まったブランデーの原酒を口に含み、喉の奥に流し込む。大きく息を吐き、そして呟いた。
「どうしたらいいんだ……」
男は、窓の外に広がる都会の夜景に視線を泳がせた。
再び、呟く。
「でも、あいつの思いは遂げさせてあげたいし、あいつの心を傷つけたくもないよ……」
男は、グラスの中身を一気に飲み干した。
男は、酒のお代わりを注文した。カウンターに、新しいグラスが運ばれてくる。男は、すぐさまグラスを手に取り、濃い酒を口に含んだ。
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