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朝方、ちょっと寒かったから、布団を引っ張った。僕が引っ張ったのは、布団じゃなくて、人の手だった。
冗談じゃない。本当に眠いんだ。休みなんだから寝かせてくれ。
いや、こんな状況、寝れるわけない。
怖くなって目が覚める他ない。
まだ布団から出てないけど、今僕は窮地の地に立たされている。
で、ちょっと考えてみた。さっき触れたとき、暖かかったし、まず死体とかではないのは分かった。それから、握りしめたくなるような可愛らしい手。女の子と予測した。
あと、今気づいたんだけど、この子僕に乗っかって寝てる。太ももあたりに重さがある。
すごく正体が知りたくなった。で、再び手を触れる。今度は手を握った。やっぱり握り甲斐のある手だ。
「んー……」
女の子が動いた。ちなみに、電気もつけてないから彼女の顔が見えない。
電気をつけて、カーテンを開けてみた。
それに合わせて、女の子の全貌が明らかになった。
ちょっと茶色がかった黒髪のポニーテールに、睫毛がながくて、ぷるぷるした唇に、小柄な体型……朝の日の出のおかげで、すごく輝いて見える。
この子、なんか、知ってる。というか、誰かに似てる。誰だろ…女優とか、アイドルとか、そんなのかな。
「あっ」
僕に気づいたのか、女の子は目をまんまるにして、こちらを見た。
「ごめん、びっくりしたよね」
彼女は照れくさそうに頭をかいた。びっくりしすぎて驚けなかった。
「何しにここにきたのさ」
僕、初対面の人間にいう言葉遣いにしてはどうだろうか。
「君の家特定してて、着いたら寝てた」
なにいってんだ、泥棒とやってることと変わらないじゃないか。どこから入ってきたんだよ。怖すぎるだろ。
「名前は?」
「当ててみて」
は?なんだこいつ。にこにこしながら当ててみてって。なんか、思いついたのでもいっとけばいいか……
「きい、ちゃん?」
「大正解」
嘘だろ。僕的好きな女の子の名前一位を挙げてみただけなのに。かわいらしくて好きなんだ、きい、って。
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