第1章

4/30
前へ
/30ページ
次へ
それから、君の名前は?とか、どこに住んでるの?とか、誰かに似てるんだ、とか差し当たりないような質問、今じゃあ出会い厨呼ばわりされるようなことばかり聞いていた気がする。 女の子は、高森希衣と名乗った。希衣ちゃんも今年から大学生になるらしく、家が少し学校から遠いからと、引っ越しを予定しているそうだ。それから、何故か趣味の話になった途端話が噛み合い、カレーの材料選びや帰り際には、そのことで持ちきりになっていた。 プライドの問題もあり、腕を奮って作ったカレーは希衣ちゃんに大絶賛され、満足げな顔をして2杯平らげた。美味しいね、と二人笑いながら、朝のニュース番組について議論したり、料理番組を見て、これ食べたい、とか、それはちょっと出来ないな、みたいな話をした。 ここの近所からは大分遠いから、もう会えないねと言う希衣ちゃんは、どこか憂いの表情を浮かべているように見えた。 せっかくだから、と、連絡先を交換した。なんかあったら今度お茶でもしようと提案したら、希衣ちゃんは嫌な顔ひとつせずに、はい、と大きく頷いた。 携帯の着信音が鳴って、僕はいやーな顔をして出る。 「さっき電話したのになんで出ないのよー」 「ごめんごめん、ちょっと寝てたかなーって、ははは」 「もー、一瀬くんってばー、じゃね、ばいばい」 「ばいばい、理紗ちゃん」 ほぼ一方通行気味の会話だった。 これでも、僕はこの電話の主とお付き合いをしている。そう、「今カノ」というやつだ。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加