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七月二十五日は亮の命日。三回忌。
この日、緋色たちは部活を休んで、亮の家に来ていた。
花束を祥子に手渡す。
仏間に通されると、部屋いっぱいにたくさんの花が飾られている。花の香りが部屋の中を漂っていた。
「すごい花ですね」
里花が壮観ともいえる光景に声を上げる。
「お友達から届いたのよ」
祥子がいった。
緋色もびっくりする。去年もそうだったんだろうか。何も覚えていない。
翔が後ろに座っていた。
最初は晃希だった。次に緋色だ。
線香を供えて手を合わせる。
仏壇の前の遺影を見つめると、バドミントン部のユニフォームを着た亮が笑っている。
十四年間見てきた笑顔。もう二度と見られない。言葉を交わすことも、抱きしめてくれることも、抱きしめることも……できない。
「うっ……っん……お兄ちゃん」
涙があふれてきた。あとから、あとから。
里花がハンカチを差し出す。受け取ると涙を拭いた。
翔がそっと肩を抱いて支えられるように奥に座ると、彼の肩に頭を預けて泣いていた。
緋色の涙が枯れ、ようやく顔を上げた頃、
「飲み物をどうぞ」
祥子がケーキとジュースを持ってきてくれた。
「祥子さん。駄菓子があったんですけど、あれは?」
里花は亮には似合わない、珍しいものがあるなと思っていた。
誰も気付かなかったらしく、えっという顔をしている。仏壇の前のテーブルを見ると、確かにある。いく種類もの駄菓子が、かわいくラッピングされた袋の中にはいっていた。
「それは、高校のお友達が持ってきてくれたのよ。仲間の間で、一時期流行っていて、亮も好きだったからって」
「へえ、亮さん。こんなの好きだったんだ」
藤と佐々は意外そうな顔で、駄菓子を見ている。
(知らなかった。お兄ちゃんがお菓子を食べていた所あまり見たことなかったから、お菓子のイメージがなかった。クッキーとかマフィンとかもある。手作りっぽい。もしかして甘いものって好きだった? わたしどこまでお兄ちゃんのこと知っていたの? 友達の中には、わたしの知らないお兄ちゃんがいて、一緒に学校で過ごしていたんだ)
目が覚めたような気がした。
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