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「わたしだけじゃなかったんだね」
家に帰ってきて、和室で寛いでいる所だった。晃希と藤と佐々はテレビを見ていた。里花はテーブルの上のお菓子をつまんでいるところだった。
みんなが緋色に注目する。
「わたしだけのお兄ちゃんだって思ってた。みんなの中にもお兄ちゃんっているんだなあって。今頃気付いちゃった。わたしってばかだね」
「あら、やっと気づいたんだ。バカだってことに」
里花はいたずらっぽく笑いながら、すかさずつっこむ。
「なに、それ。違うよ。ちょっと、言っただけだもん」
「いや、いや、いや。ほんとにバカだって」
右手を横に振りながらもう一度つっこむ。
「もう。里花ちゃんのいじわる」
緋色はぷぅっと頬を膨らませて、横を向いてしまった。すねている。
外見からは想像できない、小さな子供のような仕草にみんなは思わず笑った。 それにつられて緋色も笑う。
久しぶりに穏やかな空気が流れた。
ピンポン。
玄関のチャイムの音が鳴った。
「翔くんだ。行ってくる」
緋色は立ち上がると玄関に向かう。
玄関のドアが開いた。
(お兄ちゃん!)
一瞬、心臓が止まったかと思った。
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