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その後兵士が増員され、隊長は作業を中止するどこか、作業員の周囲に弓兵を配置し、護衛付きで石切作業を行い始めた。
約束が違う、と翼人との間でまた小競り合いが起こる。
そんな事が何度も繰り返され、辟易した翼人はエルフに仲裁を求めた。この時エルフは、あらゆる種族に知識をもたらした、自他共に認める大陸の盟主であった。
エルフの王エルフスタンは、アムルタ王を訪ねた。この頃は、人間の街にエルフやドワーフ達も、少数ながら暮らしていた。エルフたちが作る精巧な調度品は、王侯貴族達の間で人気があった。
謁見の間にある、アムルタ王が座る自然の形状を生かした玉座も、エルフの作であった。
「久しぶりだのう…シアン王よ」
エルフスタンは親しげにアムルタ王に話しかけた。
アムルタ王は苦笑した。
「失礼ながらエルフ殿、わたしは始めましてです。シアンはわたしの父です。父はすでに他界しています」
「なんと!そうであったか…すると、お主はスルタンか?」
「そうです」
「そうか、そうか、あの時の赤子が、立派になったものだ。スルタンの名は、わしが名付けた名だ。知っておったかな?」
「…まあ、父が生前に言ってましたので」
「そうか、すでに代替わりしておったのか…」
悠久の時を生きるエルフは、時間というものに頓着しない。エルフスタンにとっては僅かな時間でも、人間の世界では代が替わるほどの時が経過していた。
『代替わりしているのであれば仕方がないか。シアン王の頃は国を挙げて歓待してくれたものだ…王座の上から客を見おろすなど、無かったがな…』
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