第1話 亜人戦争

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 エルフの王は気分を害し、足早に城を出て行ってしまった。  アムルタの重臣達の中にはは、エルフ対する余りに礼を欠いた王の態度にうろたえる者もいた。しかし、王はそんな弱気をあざ笑うかのように言い放つ。 「子は、いつか親を追い抜くものだ。人間は、今やエルフより上だということを自覚せねばならん。石切場に兵士を増員しろ。人間とエルフ、どちらが大陸の盟主なのか、そろそろはっきりさせてもいい頃だ」  かくして、石切場には兵士が増員された。エルフも断崖に兵を派遣し、作業が出来ないように陣取った。  始めのうちこそ、エルフへの畏敬の念から兵士達は手出しせずにいたが、それでは仕事にならず、しぶしぶエルフ排除へと動きだした。  いざ戦ってみれば何のことは無く、エルフは強くなかった。戦闘はものの数分で人間の勝利で幕を閉じた。  エルフ怖れるに足らず、その一報はすぐに王都へ届けられた。  アムルタ王は決断した。アトラスの山々の裾野に広がる広大な森を、エルフの住む森を手に入れようと。  アムルタ軍は兵士およそ一万五千を、石切場へは向かわせず南進させ、直接エルフの森を目指した。  かくして、後に亜人戦争といわれる苦難の道のりの戦端がひらかれたのだった。
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